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弘前大学農学生命科学部、弘前大学地域共同研究センター、青森県中小企業団体中央会、有限会社柏崎青果による黒ごぼうについての研究論文になります。はじめに黒ごぼうはごぼうを高温高湿で加工した新しい加工食品である。この製法には同じく高温高圧により熟成させることで作られる黒にんにく(Black garlic)の製造方法が活用されている。ごぼうの外皮と実が共に黒色に変色し、食感が柔らくなる。また黒砂糖やドライフルーツのような甘味と独特の香りが増す。ごぼうの加工製品はこれまで乾燥野菜やお茶などのごく限られたものしかなかった。また、形の悪い規格外品や形を整えるために廃棄される部分が多く、その利用は堆肥などに限られていた。黒ごぼうはこのような未利用のごぼうを利用して製造することができ、新しい活用方法として注目されている。現在のところ黒ごぼう凍結乾燥粉末は菓子などの食品素材の他、お茶などの飲料への利用が進められている。一方で新規の加工食品であることから、栄養や健康向上に役立つ機能性については明らかになっていない。そこで本研究では黒ごぼうの機能性について、抗酸化作 用、糖吸収抑制作用、アルコール性脂肪肝予防作用について検討した。
1、黒にんにくと黒ごぼう ごぼうは古くから日本で食されている農作物である。食物繊維が豊富であると言われ、中でも高トリグリセリド血症の改善作用の報告があるイヌリンが多いとされている。また、クロロゲン酸をはじめとしたポリフェノールが多く、抗酸化作用の強い食品とされる。海外では食品としての需要よりも生薬としての使用が多く、種子は「牛蒡子」と呼ばれ漢方薬となっている。青森県は、りんご・にんにく・ごぼう・ながいもの収穫量が全国シェアの56.1%、68.0%、31.0%、43.8%(平成23年)といずれも第 1 位、 又は上位を占める。中でも青森県東部の太平洋側の地域はごぼうや長いもの生産量が多い。これは「やませ」により夏でも冷涼な土地であり、根菜類の作付けに適すこと、また、土質がやわらかなこともあり、深く伸びるごぼうや長いもの生産に適しているためである。低温であり、害虫も少なく農薬を控えることができるなど、気候風土を生かした農業を展開できる利点もある。更に農業以外にも加工品の生産にも力を入れており、最近ではにんにくの加工品である黒にんにくが有名である。青森県の黒にんにくは平成18年ごろから量産化され、本地域で数年間のうちに10億円の産業に成長した農産加工品である。にんにくは他の植物種に比べてS-allyl cysteine sulfoxide(alliin)などの硫黄化合物を多く含む植物である。古代から健康の維持に役立つ食品と考えられてきており、アメリカ国立がん研究所のデザイナーズフーズ・プログラムでは最もがん予防に効果的な食品に位置づけられている。また、抗菌、抗血栓、免疫調節、血圧調節、血清脂質低下作用などの様々な機能性が報告されている。一方にんにくは過剰に摂取した場合、刺激による腹痛や下痢、口臭の悪化が問題となる。しかし、黒にんにくは刺激や臭いの強い硫黄化合物が加工の過程で除去され、気軽に食することが可能である。更に黒にんにくに加工することで抗酸化活性や抗がん作用をはじめとした機能性の向上効果が明らかとなった。このような利点のある黒にんにくの製法を他の野菜類でも検討をおこなった。その結果、ごぼうを原料とした場合、黒にんにくに類似した甘さやうまみが生まれたことから原料野菜として応用しやすいことが明らかとなった。黒ごぼうとごぼうの一般成分について比較した結果、黒ごぼうでは糖質が増加し,食物繊維が減少していることが明らかとなった。黒ごぼうには甘味があるが、これはフルクトースが重合したイヌリンなどが分解し、食物繊維が糖質に変化したものであることが考えられる。 2、黒ごぼうの抗酸化機能  我々の体内で起こる酸化反応は様々な疾病の原因となる。例えば、がんは日本人の死因の第 1 位にあげられる疾患だが、細胞内での酸化反応が原因とされている。また、心疾患や脳梗塞などの血管に関わる疾患も、血管中の脂質の過酸化が原因である。これらの疾患の原因となる酸化を抑える食品成分が注目されている。黒にんにくは未加工のにんにくと比較し、抗酸化活
性が上昇することが報告されている 2, 3)。黒に んにくは未加工のにんにくよりもポリフェノー ル含量が増加する。また黒にんにくや黒ごぼう の黒褐色の物質とされる糖とアミノ酸の化合物 であるメイラード反応化合物による抗酸化活性 が報告されている 6)。メイラード反応はメラノ イジンと呼ばれる褐色物質を生成する反応で, みそ,醤油,パンの焼色,コーヒー,ビール,ウィ スキーなど,様々な食品の製造に関与している。  そこで,黒ごぼうに含まれる成分による抗酸 化活性について測定をおこなった。初めに黒ごぼう凍結乾燥粉末か ら水抽出物,エタノー ル抽出物,ヘキサン抽 出物を得た。その後そ れぞれの抽出物の抗酸 化活性を DPPH ラジカ ル消去活性にて評価し た。その結果,エタノー ルやヘキサン抽出物と 比較し,水抽出物が強 い抗酸化活性を示すこ とが明らかとなった (図 3)。このことから 黒ごぼうの水溶性成分 に強い抗酸化活性があ ることが示唆された。 次に未加工のごぼうと の抗酸化活性の強さに ついて比較をおこなっ た。その結果,黒ごぼ う水抽出物は未加工の ごぼうの皮,及び実の 水抽出物と比較し強い 抗酸化活性を示すことが示された。よって黒ごぼうに加工することでごぼうの抗酸化活性が上昇することが示された。3、糖吸収抑制作用 我が国におけるインスリン非依存型糖尿病患 者の数は厚生労働省の「平成19年 国民健康・ 栄養調査」(厚生労働省)によれば,「糖尿病が 強く疑われる人」は約 890 万人,「糖尿病の可 能性を否定できない人」は約 1320 万人で,合 わせて約 2210 万人であり,成人の 5 人に 1 人 が糖尿病かその予備軍という状況である。この
数は,10 年前の調査よりも 1.6 倍に増加してお り,高齢化社会の進行により今後さらに増える と予想されている。また医療費についても,平 成 18 年度の糖尿病の医療費は 1 兆 1342 億円で あり,医療財政を逼迫させる原因の一つとなっ ている。このように糖尿病をめぐる状況は深刻 であり,早急な対策が求められている。  糖尿病予防に関しては,生活習慣の改善に 加え食事,特に食後の高血糖状態のコントロー ルがポイントと考えられるようになってきて いる 7)。適正な血糖値レベルを維持するには, 1糖質の分解と吸収を阻害・遅延し,高血糖 状態を改善すること,2インスリン抵抗性を 改善し,肝臓からの糖産生放出を抑制するこ と,3インスリン分泌を促進させること等が 必要となる。 我々の摂取エネルギーの約 60% は炭水化物であり,食事により摂取された炭水 化物は唾液,膵液中の α- アミラーゼにより二 糖類まで分解され,小腸粘膜刷子縁にある α- グルコシダーゼにより単糖類に分解され体内に 吸収される。食物にはこの α- グルコシダーゼ 阻害活性を有するものがあり,糖の吸収を穏や かにし,食後の血糖値の上昇を抑制し,糖尿病 を予防すると期待される。臨床試験においてはα-グルコシダーゼ阻害薬(アカルボース及びボグリボース)を用いた大規模臨床実験が行われ、糖尿病だけでなく心筋梗塞、高血圧の発症を抑制することが報告されている。また、すでに特定保健用食品として糖の吸収を抑える、ポリフェノールや難消化性の食物繊維を含む食品が開発されている。ごぼうに多く含まれる食物 繊維には小腸内において脂質や糖質の吸収を穏 やかにする報告があり,黒ごぼうにも同様の作 用が期待された。そこで糖吸収抑制作用につい ては,黒ごぼう水抽出物の α- グルコシダーゼ 阻害活性の測定,及び C57BL/6J マウスを用い た糖負荷試験により評価した。  α- グルコシダーゼ阻害活性は倉兼らの方法 を参考におこなった 11)。基質としてマルトー ス及びスクロースを使用した。サンプルには黒 ごぼう,及び対照として未加工ごぼう実,ごぼ う皮水抽出物をサンプルとして用いた。酵素液 はラット腸管アセトンパウダーを 0.1M リン酸 緩衝液(pH 7.0)に溶解したものを用いた。そ れぞれのサンプルを加え 37°C 90 分間酵素反応 をおこなった後,0.2 M 炭酸ナトリウム水溶液 にて反応を停止した。その後反応液中のグル コース生成量をグルコース C IIテストワコー キット(和光純薬)にて測定した。  図 5(A)に基質がマルトースの場合の阻害 活性を,図 5(B)に基質がスクロースの場合 の阻害活性を示した。いずれのサンプルも阻害 活性を示したが,黒ごぼう水抽出物が未加工ご ぼう実,ごぼう皮抽出物よりも強い阻害活性を
示した。また,黒ごぼう水抽出物の阻害活性は 濃度依存的に上昇した。この結果から黒ごぼう は α- グルコシダーゼ阻害活性により血糖値の 上昇を抑える効果があることが示唆された。  そこで次に動物実験による糖負荷試験を 実施し,in vivo での効果を検証した(図 6)。 C57BL/6J マウスを 15 時間絶食した後,2 g/kg body weight の割合でマルトース水溶液,及び 黒ごぼう抽出物を 333 mg/kg body weight の割合 で投与し,20,40,60,80 分経過後に尾静脈 より採血し,血糖値の変化を測定した。コント ロール群では経口投与 20 分後に血糖値が 250 mg/dL まで上昇し,その後 40 分まで高血糖が 続いた。一方黒ごぼう抽出物投与群では投与後 40 分で血糖値が低下し始めた。よって黒ごぼ うは血糖値の上昇を穏やかにし,糖尿病の予防 につながる機能性を有することが示唆された。  この効果は黒ごぼうの加工過程で生成する α- グルコシダーゼ阻害活性を示す物質による ことが予想された。通常黒ごぼうは数日間程度 の高温高湿処理で完成する。そこで高温高湿処 理を 10,14,15,18 日間施し,それぞれの水 抽出物の α- グルコシダーゼ阻害活性を測定し た(図 7)。その結果,加工 14 日間以上のもの で阻害活性が高いことが明らかになった。黒ご ぼうは 10 日処理では黒色には変化するが,味は甘味が少なく硬さが残っている。このことか ら,黒ごぼうの美味しさと,糖吸収の緩和の機 能性を高めるためには 14 日以上の加工処理が 適当であると考えられた。黒ごぼうに含まれる α- グルコシダーゼ阻害活性を示す物質は現在 検討中であるが,高温高湿の加工過程によって 増加する物質であると予想している。 4、アルコール性脂肪肝予防作用 アルコールの摂取はストレスの解消,疲労回 復,気分転換など日々の暮らしに楽しみを与 える利点もある。その反面,摂取方法によっ ては健康を脅かす存在ともなる。アルコール性 疾患には急性的障害と慢性的障害がある。慢性 的障害は脂肪肝,アルコール性肝炎,アルコー ル性肝繊維症,肝硬変に分類され,障害の標的 となる臓器は肝臓に集中する。食品成分による 肝障害の改善では活性酸素による肝障害モデル でブドウやラッカセイの皮に含まれるレスベラ トロールによる改善作用が報告されている 12)。 また乳酸菌の成分によるアルコールによる肝障 害や脂肪肝の予防の報告がある 13)。黒ごぼう 水溶性成分に強い抗酸化活性が示されたことか ら,黒ごぼうに含まれる成分によるアルコール 性脂肪肝予防効果について評価をおこなった。
アルコール含有飼料はアルコール摂取による健康障害を評価する際に用いられる5%のアルコールを含むLieber液体飼料を使用した。7週齢のオスのC57BL/6Jマウスを、アルコールを含まない液体飼料を与えた通常食コントロール群、及びアルコール食コントロール群アルコール食黒ごぼう投与群に分け、各群8匹ずつでペアフィーディングによりそれぞれの液体飼料を投与した。実験飼育期間中、アルコール食黒ごぼう投与群には黒ごぼう水抽出物を500mg/kg body weight/dayの割合で経口投与した。通常食コントロール群、アルコール食コントロール群には同量の水を経口投与した。10日間の実験飼育後解剖をおこない、肝臓脂質重量及び血漿脂質成分の測定をおこなった。実験飼育期間中において、各群の摂食量や飲水量に有意な変化は認められなかった。また白色脂肪組織、褐色脂肪組織、肝臓をはじめとした各臓器の重量にも変化が認められなかった。一方、血漿の総コレステロール、リン脂質の値がアルコール食コントロール群で通常食コントロール 群と比較し上昇及び上昇傾向を示したのに対 し、アルコール食黒ごぼう水抽出群では改善する傾向を示した(図8)。またアルコールによる脂肪肝の改善作用を評価するため肝臓脂質重 量を測定した。その結果、アルコール食コントロール群と比較し、アルコール食黒ごぼう投与群では肝臓脂質重量が若干低い傾向を示した。今回は短期間によるアルコール食の投与であったことから、引き続き長期間でのアルコール食摂取による脂肪肝の抑制作用の評価を進めている。おわりに ごぼうは単価自体が高額ではなく、副菜であることから飛躍的な出荷量と利益の増加を目指すことは困難であった。また青森県はごぼう生産量の多い地域であるが、その認知度が低く、今後青森県の主力農産物としてブランドイメー ジの確立が急がれている。黒ごぼうは形が不揃いなものや折れてしまったものなど商品価値の低いごぼうも原料として使用することができ、廃棄されていたごぼうの有効活用が可能とな る。本研究により黒ごぼうは未加工のごぼうよりも抗酸化活性が高く,血糖値上昇抑制作用な どの健康機能性を有することが示唆された。今 後はごぼうの新しい利用法としての第 2 の黒に んにくのような農産加工品としての発展が期待 される。 [謝辞]  本研究は,JST 復興促進プログラム(マッチ ング促進)「黒ごぼうの機能性を利用した新製 品の開発」の助成を受けておこなわれた。参考文献 1)西川 研次郎ほか,食品機能性の科学,(株)産業技術サービスセンター,2008. 2)Sato E, Kohno M, Hamano H et al. Increased anti-oxidative potency of garlic by spontaneous short-term fermentation. Plant Foods Hum Nutr., 61(4):157-160, 2006. 3)Kim SH, Jung EY, Kang DH et al. Physical stability, antioxidative properties, and photoprotective effects of a functionalized formulation containing black garlic extract. J Photochem Photobiol B., 117:104-110, 2012. 4)Jung YM, Lee SH, Lee DS et al. Fermented garlic protects diabetic, obese mice when fed a high-fat diet by antioxidant effects. Nutr Res., 31(5):387-396, 2011. 5)Wang D, Feng Y, Liu J et al. Black Garlic (Allium sativum) Extracts. Enhance the Immune System. Med Aromat Plant Sci Biotechnol., 4(1) 37-40, 2010. 6)Amarowicz R. Antioxidant activity of Maillard reaction products. Eur J Lipid Sci Technol., 111:109-111, 2009. 7)水島 裕ほか,アンチエイジング・ヘルスフード-抗加齢・疾病予防・健康長寿延長への応用―,(株) サイエンスフォーラム,2008. 8)Hanefeld M. The role of acarbose in the treatment of non-insulin-dependent diabetes mellitus. J Diabetes Complications., 12(4):228-237, 1998. 9)Matsumoto K, Yano M, Miyake S et al. Effects of voglibose on glycemic excursions, insulin secretion, and insulin sensitivity in non-insulin-treated NIDDM patients. Diabetes Care., 21(2):256-260, 1998. 10)Okada S, Ishii K, Hamada H et al. The effect of an alpha-glucosidase inhibitor and insulin on glucose metabolism and lipid profiles in non-insulin-dependent diabetes mellitus. J Int Med Res., 24(5):438-447, 1996. 11)Kurakane S, Yamada N, Sato H et al. Anti-diabetic effects of Actinidia arguta polyphenols on rats and KK-Ay mice. Food Sci Tech Res., 17(2):93-102, 2011. 12)Sener G, Toklu H, Sehirli A et al. Protective effects of resveratrol against acetaminophen-induced toxicity in mice. Hepatol Res., 35(1):62-68, 2006. 13)Segawa S, Wakita Y, Hirata H et al. Oral administration of heat-killed Lactobacillus brevis SBC8803 ameliorates alcoholic liver disease in ethanol-containing diet-fed C57BL/6N mice. Int J Food Microbiol., 128(2):371-377, 2008.

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